家族4人全員ラクロス経験者! 審判の醍醐味や息子さんの応援、仕事、主婦業との両立を1級審判員の大塚紀代子さんが語る

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日本人初の国際審判員試験合格など、審判員として第一線で活躍する大塚紀代子さん。

仕事、家庭、子育て、審判とそれぞれどのように向き合ってきたのか、その想いについて伺いました。

1990年:白百合女子大学ラクロス部入部(大学1年よりラクロス始める)
大学1年で審判試験合格、その後国内の多くの試合の審判を担当
1993年夏:大学4年で初めて日本が参加したスコットランドのW杯に帯同し、審判講習会に参加する。
1993年:全日本選手権の際、USAの国際審判が育成の為に来日した際はホストファミリーとして受け入れ、翌年卒業旅行で審判の友人と来日した二人のお宅にホームステイし、Philadelphia州の審判講習会にも参加させてもらう。
1995年:USAで行われたU19W杯に審判として参加。その大会期間中に日本人初の国際審判員試験合格。
1996年:スウェーデンで行われたヨーロッパ選手権に審判として参加
1997年:日本で行われたW杯に参加
1998年:第一子出産後は育休を経て審判復帰したが、第二子出産後やめる
2012年:再度4級から審判試験を受け直し2016年1級合格し現在に至る

 

――ライフステージに関するご経歴や現在のお仕事の概要についてお聞かせいただけますか?

1994年大学卒業後、日興証券に就職。1996年に結婚したことを機に退職し、実家の会社に入りました。その後、子育てをきっかけに子供の教育に携わる仕事がしたく保育士の免許を取得しましたが、母が進行性の難病となり実家の仕事を継ぐことになります。現在は、家業の四代目として、不動産関係の会社経営をしています。仕事ではありませんが、息子の学校の保護者会の役員や後援会会長(PTA会長)の経験は仕事でもラクロスでも大変役に立っています。

――なぜ審判を始めようと思ったのですか?

大学1年の時に審判試験を受けて合格しましたが、審判をし始めたころは人手が足りていなかったので、合格すれば必ず審判をしなければなりませんでした。選手時代は代表チームの選考も受けたが最終で落ち、大学チームの主将でしたが選手としては挫折を味わいました。けれど大学3年の時には審判員として1級を取得することができ、学生のうちに全日本の試合を経験したことで審判の方が向いているのかもしれないと思い、審判としてトップを目指そうと思うようになりました。

(写真:本人提供)

――審判の魅力や醍醐味はどんな部分にあると感じていますか?

審判は選手以外で唯一フィールドに立つことができ、ラクロスのプレーを間近で味わえるので、ラクロスオタクとしては大変魅力的です。選手と一緒に良い試合を作る醍醐味は代えがたいものがありますね。数えきれない程の試合で審判をしてきましたが、100%うまくいったと思えたことは一度もなく、常に反省と研究の繰り返しで、ラクロスの進化と共に成長し続けられるところが楽しいのかもしれません。でも、実は全国(全世界)にいるさまざまな年代や背景の審判仲間がひとつのチームゼブラなので、その仲間と一緒に切磋琢磨出来ることが一番の魅力であるように思います。

ただ、近年は映像で試合が発信されることも多くなり、審判員の判断に、いままで以上に厳しい目が向けられるようになり、批判や検証の目にさらされることも増えました。選手やチームが審判のせいで負けたと思っていると感じた時は、自分が吹いていない試合でも責任を感じます。

コロナ禍で十分な準備が出来なかった昨年は今まででもっとも辛い1年でした。ただただ審判が好きだからしているという感情とは違う形で試合にも臨んでいました。コロナ禍で選手にとって本当に大切な、やっとプレーできた試合を準備が十分ではない自分に任せられる重圧とコーチたちの例年よりシビアな態度は応えるものがあったのも事実です。

また、多くの審判仲間が試合に入りたいのにさまざまな事情で吹くことができず、全国の仲間にも会えないのは本当に寂しかったです。私も母の介護があるので大変迷いましたが、家族に介護を無理して変わってもらい審判を続けました。息子の試合を誰かが吹いてくれるのに私が吹かないというのは違うな、という気持ちでしたね。

――息子さんお2人ともラクロスをやっていますが、大学前にラクロスに触れる機会が多かったのでしょうか?また、いつかラクロスのプレーをしてほしいと思っていましたか?

二人とも赤ちゃんの時は私の審判している試合、小学生や高校生の時には主人のチームの試合観戦に連れて行っていました。主人も立教大学男子ラクロス部の出身なので我が家でのラクロスはマイナーなスポーツではなく、普通に選択するスポーツであり、その中でもプレーする価値のあるスポーツの一つだったと思います。

けれど、長男は野球、次男はラグビーを小学生からしていたこともあり、私も主人もとくにラクロスをしてほしいとは思っていませんでした。こと次男に関しては、ラグビーを大学でも続けてほしいと思っていたくらいです。むしろ学校の先輩がラクロス部に入って活躍していることが、彼らには刺激だったと思います。

 

――子育てなどで少しラクロスから離れた後、戻られたのはなぜですか?その原動力を教えてください。

母が進行性の難病になり、また長男が小6の時に東日本大震災を経験したことでとても死を意識するようになりました。やり残したことはないのか、私の好きなことって何だろうと真剣に考えたときに、一番に浮かんだのが、途中でやめたラクロスの審判でした。私が国際審判になるまでに多くの海外の審判や日本の先輩方に教えてもらったことを無駄にしないように、そしてラクロス界に何か恩返しできるようにもう一度審判員になりたい。今でもその気持ちで活動しています。

――ライフステージの変化によってラクロスから離れてしまう人が多い中、関わり続けてよかったと思う瞬間はありますか?

私は一度やめてしまったので偉そうなことは言えません。現在審判をしていて、やめない方が良かったと思うことの方が多いです。審判界も今はライフステージに対応した関わり方が出来る環境を整備しています。細々でもいいので自分が少しでも関心のあることには足を突っ込んだままにしておいてもいいと思います。仕事と家庭以外に自分の好きなことだけに打ち込める時間はとても貴重です。

また、審判仲間やプレーヤーとは全く別目線の人とのかかわりで、多くの気づきをもらえますし、若い審判とも審判チーム内ではフラットな関係です。

息子以上に年が離れている方たちとなにかに取り組むことは普通ならばあり得ないですがとても楽しいですね。けれど、審判を一度やめていたことで役立っていることもたくさんあります。子供を通して別のスポーツを深く知ることが出来たことは、今とても役に立っています。選手やチーム側、観戦者側、学校の事情など色々と社会勉強することができたのは、私の審判姿勢にも反映されていると感じています。一度ラクロスから離れてしまってもほかの経験をもとに活躍できる場もあるので、出戻りもとても良いと思います。

――審判、息子さんの応援、仕事、主婦の両立について、ある平日とある休日のタイムスケジュールを教えてください。

自宅が職場で決まった休みがないためルーチンワークになってないことが多いです。

平日に審判に行くこともよくありますし、審判員だけでなくラクロス協会の審判部の仕事もしているので、ほかの方より審判活動に割く時間は多いと思います。ほぼ毎日なにかしら審判部の仕事はしています。

【ある平日】

5:00 起床し、息子朝練の朝食またはお弁当準備、その後家事や審判部のメール対応

9:00 仕事(自宅が職場なので移動なし)

12:00 昼休みに審判部の仕事

15:00 愛犬散歩、その後仕事の続き

18:00 一応仕事を終了させ、その後家事

19:30 夕飯、そして家事

21:00 審判活動の準備(次の試合のための動画確認など)、審判部の仕事、トレーニング

23:30就寝

 

【休日、審判のある日】

4:20 起床し、息子の朝練のために朝食またはお弁当準備

5:00 母の介護と家事

9:00 審判活動へ行くために準備

13:00 試合(審判の反省は帰宅中にしてしまう)

17:00 帰宅、夕飯準備など家事

22:00 仕事か、審判部の仕事

23:30 就寝

――ご子息とラクロスに関する会話は普段からなさいますか?する際はどんなお話をなさいますか?

主人、私、長男、次男と全員がラクロッサーなこともあり、ほぼラクロスの話しかしないです。同居の父母も青学出身で息子たちを応援していますし、同居はしていませんが私の妹も横国の初代ラクロッサーです。

しかし、残念ながら息子たちから私への相談はほぼなく、私が一方的に試合の感想や情報を伝えています。聞いてはくれますが、役に立っているかはわかりません。むしろ、息子の友達(女子ラクロスの子たちも含めて)の方が聞いてくれます。息子たちは、主人とは戦術やチーム運営のことも話しています。

私の役割は息子の身体作りのサポートがメインです。特別にといえば、息子のチームの保護者に声をかけて多くの保護者と息子のチームの応援に行っています。また、息子の大学でのラクロス部の地位向上のために先生方、ママ友パパ友学校関係者にラクロス部の良さを強めに伝えています。

――ラクロッサー、審判へメッセージをお願いします。

社会人になっても「やらされる」ことが多い中、自分から能動的にできる活動はとても楽しいです。まだ審判資格を持っていない人も、持っているけれど続けようか悩んでいる方も、試しにもう少しだけラクロスにかかわってみてほしいです。審判界は人材大募集中です。選手としては難しかったかもしれませんが、審判としてならば世界大会に参加できる可能性はまだまだ高いですし、こちらでトップを目指すのもありですよ。

また、私は生涯ラクロスを掲げているクラブチーム・Funにも所属しています。アラフィフの草ラクロスも楽しいです。

ラクロスはまだまだこれからのスポーツです。あれだけ時間を費やした日々を4年間で辞めちゃうなんて本当にもったいない。プレーでもスタッフでも、審判員でも、所属していたチームの応援に行くでも何でもいいので、一緒にラクロスに関われたらうれしいです。

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